今日は、フランス貴族の暮らしについてお話します。
① 先祖から受け継いだ、家具、美術品、食器を一生使う。
フランス人たちの暮らしは、元々、どこのご家庭でも、先祖から子孫へと受け継がれる品物が多くあります。
例えば、食器。セラミックで有名な会社に焼いてもらい、家族の名前を入れてもらった食器、
あるいは家族のひとりが結婚の際に、両家の名前を入れて一式揃えた食器などを大事に使っています。
フランスにおいては、美術古品、中古市というものが、消費の大きな位置を占めますが、
彼らフランス人貴族たちは、「歴史がある」品物を、そうでない、新品よりも重視しています。
自宅に置く家具にしても、先祖から受け継いだものを、大事に使うのです。
ある貴族の末裔の家の息子さんが住んでいたアパルトマンのキッチンの扉たちは、木製の重厚なものですが、
「これは、僕の祖母が別荘を改築した際に、全部もらってきて、うちのキッチンに入れたんだよ。」とのこと。
②フランス人は10着しか服を持たない。
ジェニファー・L・スコットさんという方の書かれた、
「フランス人は10着しか服を持たない」という本が以前話題になりました。
ひとりひとりのフランス人たちが、それぞれ何着の服を所有するかについては、
それぞれの人の、衣類に関する物の考え方と、持つ仕事と、人生観で変わってくると思いますし、
8着なのか10着なのか、それとも13着なのか、は大事なことではありませんが、
ひとつ確かなことは、「フランス人貴族は服を持たない・買わない」ということです。
服だけでなく、「物」も買わずに、お金を使わない生活をしているのです。
本当に、「フランス人は10着しか服を持たない」と言っていいと思います。
普段着は数が少なく、本人にとって心地のよいものをずっと着ています。
フランスという国は、世界へそのモードを発信している国です。
シャネルやエルメス、ジバンシーにディオール。
フランス人貴族たちには、これらのモードがどのように映っているのでしょうか。
彼らは、これらモードを「仕事服」だと言います。
仕事を持つ女性が、そのプレゼンテ-ションの為にまとうための服。
彼らはその仕事の為に、これらの服を新調するのです。
また、彼らの衣類は、お仕立ての服も多く、ある貴族の末裔の女性のお宅にうかがったときのこと。
「これぞうきんに使いましょう」と言って出てきたのが、ピンク色のコットンの生地。
この生地、どこかで見たような・・・と思って思い出したのが、その女性が数日前に着ていたシャツ、お仕立ての服の残りとのこと。
④家族とのディナー・家族のイベントは何よりも大事なイベント。
フランス人たちにとって、「家族と過ごす」というのは、誰にとっても大事なことなのですが、
貴族の人々にとっては、これらは「大イベント」で、家族総出で、クリスマスを祝ったり、
誰かの50歳を祝ったり、卒業を祝ったりするのです。
家族の絆の強いフランス人貴族、もちろん人間同士ですから、時にはいさかいだってあることでしょうが、
家族の絆を常に確かめ、イベントを分かち合い、人生を分かち合っています。
もちろん、日本人の中にも、このようなかたは大勢いらっしゃるわけですが、このような、
あたたかなイベントから学ぶことは多いと思います。
⑤インテリアの見事さ。
日本の雑誌や書籍などでは、よく「フランスのインテリア」の美しさについて特集されていますが、
彼らは、毎日、毎日、インテリアの為に時間を取っています。
全てが美しく整えられた家、フランス人たちの美的感覚とその能力の高さは、彼らの「インテリア」に最も発見しやすいと言えるかも知れません。
貴族の人々は、これらに本当に気を配っています。
⑥フランス人はよく働く。
フランス人、というと一般的には「サービス精神がないから、サービス業者の態度の悪さは最悪」
「フランス人は働かない」といったイメージをお持ちのかたも大勢いらっしゃることでしょうが、
それは、一部の態度の悪いサービス業者に限った話で、実際のフランス人たちは、実は、よく働く人々です。
「私は、集中して働くことをフランス人から学んだ」とおっしゃったのは、
映画評論家で随筆家の秦早穂子氏だったと思いますが、
彼らフランス人は、そのインテリアに、仕事に、美しさを追求して驚くほど、働いています。
上の貴族末裔の女性のお宅で、あるとき、家族のイベントがありました。
著者が料理をしたのですが、料理を終えて、
「さあさあ、あなたも早く席について、始めましょう」と言われ、イベントを始めました。
イベントは深夜近くまで続き、終わった後に、私が「方付けます」というと、「いいのよ、明日で。もう寝ましょうよ。」とのこと。
翌日の朝、失礼にならないような時間に電話をかけ、「私のほうで、方付けさせてください」と言うと、
「大丈夫、あれは今朝5時に起きてもう方付けたから。」とのこと。
彼らと共に過ごすと、一日中、実によく働いています。
日本人もよく働くことで有名ですが、どこの世界でも、「美しいもの」「大事なこと」の裏には、
こうして「よく働く人々」の力があるものなんですね。
フランスでは、生活の美しさを追及することを「アール・ド・ヴィーブル」ART DE VIVREと言いますが、
こうやって、毎日の日々を大切に、古いものを大切に、瞬間瞬間を大切にすることが、「アールドヴィーブル」なのですね。
フランスでは、こうやって実に沢山のことを学ばせていただいている
マダム・麗・ド・ラ・ヴァレットでした。